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執筆者の写真Obinata Goro

触覚センサ付きロボットグリッパ   ー柔らかい食品を人のように掴むことができますー

更新日:2021年3月16日

中部大学の大学院修士課程の学生である野嶋君の研究として、3指ロボットハンドの指先に触覚センサを取り付けて、稲荷ずしや海苔巻きずしを崩さずにハンドリングするロボットシステムを組み上げて実験を行いました。その概要について説明します。


使用したロボットハンドはシナノケンシ㈱製の3指ロボットグリッパとu factory製のマニピュレータxArm6および㈱太田廣製のセンサ用パッドを使用した触覚センサシステムである。3指グリッパは、指先間の最大開口幅が110㎜でしたので、人の手の最大開口幅である145㎜に近づけるように指先を、新たに設計したものに変更した。ただ開口幅を広げることはつまらないので、100㎜幅と145㎜幅を切り替えられるような仕組みを設計製作しました。その写真を以下に示す。市販されている3指のロボットグリッパの指を触覚センシング機能を持つ多機能指に交換し、その機能を検証しました。

まず、リンク機構を用いて指先の開度を大小に変更することができるようにしました。開度を大にした場合、人の手と同じ程度(145㎜)になり大きなリンゴなどをつかむことができます。この機構は形状記憶合金アクチュエータ(配線を除いてφ1㎜×15㎜)で駆動され、ソレノイドで開度小の位置で固定されます。右の写真は、指の構成要素と指先開度の大小に対応した指の形状を示します。





指先に取り付けた触覚センサはCMOSカメラからの画像処理によって接触の状態をマルチモーダルで計測するもので、左の写真のような寸法であり、写真上部の円形のものがドーム状のセンサの接触部です。外力が作用していない状態では径20㎜の球の一部を切り取った形状をしています。このセンサをグリッパの3指の先に取り付けて使用します。


市販のロボットグリッパ(シナノケンシ製ARH305A)に取り付けた様子を下の図に示しています。


3指グリッパの場合、対象物をピックアップしようとするとき、3指すべてのしっかりとした接触を確認せずに持ち上げてしまうと対象物の重心の位置によっては、さまざまなトラブルが起こる可能性があります。その典型例として、2指だけの接触で持ち上げると対象物が回転してしまいますが、指先の触覚センサで3指のしっかりとした接触を確認して対象物を持ち上げれば、このようなトラブルを避けることができます。これらの動作をロボットマニピュレータ(uFactory製 xArm6)の先に取り付けた触覚センサ付きグリッパシステムで、これらの動作を比較したデモを次に示します。





     -3点の接触を確認せずに持ち上げると把持物が回転することがある-


-3点の接触を触覚センサで確認したうえで持ち上げれば、安定したピック&プレイスが行える-


触覚センサは、指先の押し込み方向(センサ面の法線方向)に力を±5%の精度で計測することができる。また、指先に対するせん断方向への力についても、±5%の精度でその方向と大きさを計測できる。この機能を上手に使えば、柔らかで壊れやすいものをそっと把持して滑り落とさないように持ち上げることができ、加えて持ち上げたものの重さを同時に測ることができる。次のデモでは、巻き寿司と稲荷すしを形を崩さずに持ち上げて、戻す作業をビデオで示します。


-巻き寿司の一片を形を崩さずに持ち上げて戻す-


接触圧力を検出して、3指の圧力の値が閾値を超えたら持ち上げます。また、また持ち上げの途中で鉛直方向のせん断力を3指それぞれで測定して、その合計を把持している寿司の重さとして算出します。検討の結果、±5%以内の誤差で重さが計れることがわかりました。巻きずしの外周に巻いてある海苔の滑りやすさは、その湿気で変化しますので、最小の把持力での持ち上げには、いくらかの調整が必要でした。現在、海苔の滑りやすさ(摩擦係数など)を評価する方法の適用を検討中です。

次のビデオは巻き寿司と似ていますが、稲荷すしのピック&プレイスです。その形から俵状の形状の下側に指を少し入れることによって極めて安定な状態でピック&プレイスできます。


-稲荷すしのピック&プレイスー




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